何となく気になっていたその地域は、のどかな農村地帯を抜け、山間の中にある温泉宿。
後から地元の人に聞いた話では、江戸時代には宿場町として栄えた街道だったらしく、そのためか至るところに温泉宿が点在しています。
その頃は、まだインターネットで検索・・・という環境がなかったので、旅行雑誌を買って目ぼしい宿に電話。ある温泉宿の一軒が空いていたので予約。宿泊することにしました。
目をつけた土地になんとか「足跡」を付けたい一心で宿泊したその温泉宿は、若い女将さんと従業員が1~2名ほどの小さな宿。夕食も他のお客様がすぐ隣のテーブルという程度の広間で一同で食事しました。
お料理は丁寧に作られた美味しい食事。田舎らしさを感じさせる素朴な味わいは、地元の食材を取り入れた、都会で生活している身には、ある意味 ”贅沢な味” な印象です。
夕食も終わりになった頃、女将さんはお客様のあちこちに愛想を振りまきながら話しかけていました。
そして、私のところへ来ると、「今回は何を目的にお越しになったのですか?」と聞かれました。
「何を目的に」とは、何とも不思議な質問。
まるで土地を探しに来ている私の目的が顔に書いてあるかのようでビックリしました。温泉宿に泊まっている人に向かって「何が目的ですか?」とは、あまり質問しないような気がするんですけど。
で、心を見透かされたような質問に戸惑いながらも、さすがに「「土地を探しに来ました」などと、雲をつかむようなことは恥ずかしかったのと、照れくさかったので言えず。
そこで「週末農業でもやろうかと思って・・・」みたいな、あいまいな返答をしました。
女将さんはさらに「週末だけちょっとやる程度?土地を買って住んだりしないの?」みたいな、ハッキリと内容は覚えていませんが、何だかますます心を見透かしたような質問。
私もつい興味があるので、将来、田舎に住むことも視野に入れていることを伝えたら、その女将さんはさらにさらに意外なことを申し出てきました。
「今、ちょうどいい物件を知っているんだけど、明日の朝、見に行ってみない?知人から、誰か土地を買いたい人がいたら紹介してほしいと頼まれているんだけど。せっかくだし、見るだけならタダだから大丈夫よ。」
えっ?
なんだか、意外な展開。
まあ何はともあれ、おっかなびっくりではあるものの、翌朝女将さんに案内してもらうことにしました。
続く。